池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

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池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

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第13便「リトグラフ」

今回はリトグラフに挑戦です。
同じものを見比べたいのでモチーフは同じくハトの顔。


リトグラフは石版画とも呼ばれ、すべすべの石版の上に油脂性の画材を使って描いていく技法です。
銅版画に比べ明るい黄色みがかったグレーの画面に濃い色のインクや鉛筆で描くので明暗の反転がなく、作業自体はいつものペン画の要領とさほど変わりません。


その油脂性の画材ですが、スタッフの方が僕が日頃使っているペンに近い細さのものをいくつか用意してくれました。
しかし残難ながらこれが異常に使いづらいのです。
僕が慣れてないからか油脂性というインクの性質からか、とにかく頻繁に目詰りします。
線自体もすーっと引けるというよりも、ペン型の修正液のように若干ペン先を押し付けないとインクが出てこないので線描というより点描のような雰囲気。
とにかくなかなか上手くいきません。
ペン先が太いものは問題なく描けるものの、それでは太すぎて羽毛の一枚一枚を表現できないので不自由ながらも使うしかなく。


リトグラフ用の鉛筆と併用してようやく出来上がりました。
いよいよ摺りに入りますが、職人さんが「このグレーの下地に惑わされる人が案外いるんだよ。これでオッケーか?」と訊ねます。
内心「俺はそんなミスはしない」と思いながらも笑顔でオッケーと答える僕。
「よしわかった」と職人さん。
固そうなインクの塊をへらで何度も延ばし、それを小さなローラーいちめんになじませます。
それを原画につけたり、洗い流したり、拭いたりといくつかの面白い行程を繰り返し、いざ印刷という所で今日は時間切れ。
残りは来週です。


日本の感覚だと「もうちょっとだからやりましょうか」となりそうなところですがそこは北米。
途中だろうが何だろうが5時には終わり。
みんな帰りの時間には実にシビアです。
もうちょっと頑張るというのが日本人の美徳ですがここでは人によっては嫌な顔すらされることも。
仕方がありません、引き下がります。


そして翌週の月曜日、摺り上がったものを見て愕然!
全然色が出ていない。
色といってもモノクロですがとにかくスカスカで立体感や空間感、色味の幅などが全く表現されていない。
あんなにしっかり描いたのに。


スタッフみんなの「どうだ?」の質問に言いたいことは山ほどあれどそれを伝える言語力がなく、それでもなんとか「原画と全然違う」「もっと濃く摺ってくれ」
と伝えますが皆意味が分からないのかキョトンとしています。
「これでオッケーと言っただろ?」
「色を変えたいのか?」
いや違う。もっと描き込んでるんだからそれを忠実に表現してくれい


らちがあかないのでもう一度加筆することにしました。
職人さんも意味が分からぬといった表情でとりあえずもう一度描ける状態に戻してくれます。
渡された石版は一度インクが落とされ、グレーの面にうっすらとハトの顔が描いてあります。
それを見ていて「あっ」




グレーの面に惑わされてた…….


白い紙に黒のインクで描いた場合、線の密度が薄いと線同士の隙間から白がチラチラと目立つので、そこにもう少し加筆をしたりして描き込みの密度を調節できるのですが、
この石版の場合、グレーの下地とインクの色味が近いのでよほど意識して描き込まないと、一見しっかり描いているように錯覚してしまい、白い紙に写した時に正体がバレてしまうのです。
経験豊かな職人さんはそのことも見越してあの時声をかけてくれたんだ……。


「だから言ったろ」とポンと肩を叩かれ、グウの音もでないままとにかく次はしっかりと描いてからの2回目。
今度は割合上手くいったようです。
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by mag-ikeda | 2013-10-01 20:53