池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

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池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

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第20便「出産」

9月の終わりに女の子が生まれました。

初めての海外での出産は不安だらけで最初はかなり緊張しました。
一人目の子と違って今回は予定日を決めて病院で帝王切開で取り出すというもの。
こっちが勝手に誕生日を決めてしまうという事にかなり違和感を覚えながら手術当日の朝を迎えます。
通訳さんと一緒に手術室に入っていく妻の背中は不安そのもの。
お父さんは呼ばれるまで待っててくださいと言われ一人別室で待機です。


30分後看護婦さんに呼ばれて入ったその光景といったら…..
忘れられません!
手術室のドアを開けるとそこには、無影灯にこうこうと照らされてカエルの解剖みたいに大股開きで寝かせられてる愛しき妻の姿が!
もちろん何も隠されていません。
大股開きのむこうに僕がいるとは夢にも思わないであろう妻の周りでは、大勢の看護婦さん達が慌ただしくもどこか賑やかに立ち回っています。
そのあまりにもオープンで開けっぴろげな雰囲気はこれから始まる感動的なセレモニーの準備というよりは、解剖実習の始まる前の研究室、もしくは調理場と言った方がどれだけしっくりくるでしょう。
てっきりカーテンの向こうから妻の出産を見守るもんだとばかり思っていた僕はかなり面食らってしまい、ここはアメリカ、ひょっとして僕が取り上げろと言われなくもないという不安が
とっさに脳裏をよぎりましたが、幸運にも今回その出番はありませんでした。


妻の顔の横に座るとほどなくカーテンが引かれ、顔からむこうは僕らからは隠されます。
しばらくして4人の女の先生達が手術を開始しました。
時折笑顔まじりに執刀しているカーテンむこうの雰囲気とは裏腹に、こちらでは苦しそうな妻の表情が。
麻酔が効きづらい体質なのか、触られたり引っ張られたり剥がされたりが分かるというのです。
さすがに痛さはないまでも、かなり苦しそう。
夫はただ手を握ったり、声をかけるしかありません。


通訳さんが横でずっと今の経過を伝えてくれます。
「今ここを切ってます」とか「あともうちょっとですよ」とか。
そして約30分後、元気な泣き声がして、カーテン越しにまだ紫色の赤ちゃんをひょいと抱え上げ、我らに見せてくれる先生。
そして即座に看護婦さんに渡すと、先生は今度は縫合に移ります。
一方渡された看護婦さんは赤ちゃんをそばの新生児ベッドに連れて行き、数名で拭いたり、頭囲を計ったり注射をしたりと大忙し。
僕も呼ばれカーテン横を通って赤ちゃんのところへ。
が!

その時またもや衝撃映像が飛び込んでくるではありませんか!
そう、お腹がパックリ開いた妻の横を通るんです。
そりゃあ言ってくれれば目をつむりますけど聞いてないもの! 見たくなくても見えちゃいますよ!


そりゃあ今は結婚してますけどちょっと前までは彼女だったんですよ。
これでもまだときめきやロマンも大事にしたい。
結婚前、初めてデートした時のはにかんだ顔とか、誕生日に一緒に食べたディナーとか、タイのビーチで泳いだ事とか…. いろんな思い出もある!
それがあんた、ぶっきらぼうに内臓を見せられて、「わ~こんな内臓してたんだ♥ やっぱりこっちも可愛いね」

…….ってなるか!!


しかも新生児ベッドで一通り処理の終わった赤ちゃんを今度は体重計に乗っけて、その表示された体重の前で「写真を撮るか?」
そりゃあとっさにうなずきますわい親なら。
するとまだ裸の赤ちゃんをひょいと持ち上げ、体重計と並べて「はいよ!撮りな」と看護婦さん。

釣った魚の計量か!!



まったく何から何までどうしてこうもオープンなのか…..
僕らにとっては一生で数回の特別な事でも病院にとっては日常の出来事なんでしょう。
厳かで神聖な感じが全くないまま、仰天と喜び、不安の入り交じったてんやわんやの出産はこうして終わりました。


日本では術後10日ほどは入院ですがここはアメリカ。3日で退院です。
自然分娩ならば日帰りの事もあるとか。
さすがにみんなタフですね~。
うちも4日目には家に帰ってきましたが、日本人のママたち数十名がミールチームを結成してくれ、僕らのために一ヶ月間ほぼ毎日日替わりで夕食を届けてくれました。
また同じアパートの住人や館長さん、美術館のスタッフもいろいろと助けてくださいました。
病院の名誉のために言うと、手術こそ驚きの連続でしたが、さすがアメリカでも有数の医療が行き届いた都市というだけあって施設や管理も行き届いて看護婦さん達もとても優しく、
入院中はほとんどストレスなく快適に過ごすことができたようです。



お互いの両親に頼る事もできない海外での出産は本当に不安との闘いでしたが、こうしてたくさんの方に助けていただいたおかげでなんとか乗り切れる事ができました。
感謝なしではいられません。
また一つ、人のありがたさが心に沁みた経験になりました。
この子が大きくなった時に、しっかり伝えなくてはなりません。
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by mag-ikeda | 2013-11-12 21:45 | Comments(0)