池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

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池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

バンクーバー日記


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第16便「ガレージセール」

夏になると毎週末、どこかの通りで「ガレージセール」なるものが催されています。
これは文字通り自分の家の倉庫の前で不要になったものを安く販売するというもの。
小さな空き瓶から大きなソファまで、その人なりの不要品が並ぶので毎回お宝探しのような気持ちで出かけます。

バンクーバーに住んでいた時もこのガレージセールでずいぶん助けられたので、今回も新品の家具は買わずにこれでまかなおうと決めた我が家、週末毎に地図を片手に繰り出します。
マディソンは学生の街なので引っ越しも多く、バンクーバーよりもセールの数は多いもののそこは学生、質はいまいち。
我らの狙いは学生ではなく一般家庭の家財道具なので場所も大学周辺より郊外を重点的に探ります。
車で通りを流しながら「Garage sale」の看板に注意をこらし、見つけたら即ハンドルを切る。
この繰り返しですが残念ながらなかなかよい物には巡り会いません。
だいたいは着古した服や二束三文のガラクタのような物ばかり。服は全てにおいて巨大サイズなのでその時点でアウトです。


がしかし、この日は違っていました。
それは8月15日のこと。


「この日は学生が一気に引っ越す日。街中に家具が置いてあるから持っていき放題だよ!」
との館長さんからのアドバイス。
タダな上にひょっとしたらその中に掘り出し物があるかも….との思惑から仕事を休んで朝から出発。
と、家を出るや否や左手に黄色い小さな看板が。
目的地とは逆方向だけどせっかくだから試しに覗いてみようと思ったのが運命の分かれ道。


なんとガレージどころか一軒まるまるセールじゃないですか!
これはエステートセールといって遺産を処分する目的で開かれるものらしく、豪華な邸宅の中のありとあらゆる物が信じられないような価格で出ていたのです!
主催者であろう上品なマダムの話を聞きかじった感じでは、どうやら旦那さんが亡くなって彼が集めたコレクションやらなんやらを処分するとのこと。
そのコレクションはコレクターにはヨダレものの牛乳瓶にはじまり食器、テーブル、ソファなどのインテリアまで何から何まで超こだわった物ばかり。
青山あたりの家具屋で見るようなビンテージものだらけです。
それらがわずか2ドル程度、ソファですら25ドルと言われては興奮しないわけがありません!
品物の質もさることながらその数、値段にすっかり度肝を抜かれた僕達はその宝の山を夢中で探索。
こんなすごいセールはそうお目にかかれるものではないのでこの期を逃してなるものかと娘そっちのけで漁る様はまさに欲の亡者。
他のお客さんもひっきりなしに入ってくるので迷ってるヒマはありません。


そして約1時間後、狂乱の宴は終わり大興奮の中会計へ。
タッチの差で60年代のかっこいいソファは逃したものの、テーブル、ソファ各種、いすに食器に小物などなど
買いに買ったり大小合わせて約30品。
それらが全部でなんと160ドル!(約1万6千円)
驚愕としかいいようがありません。


こんなセールに出会ってしまったらもう今後、どんなセールを見ても満足しないかもしれないなぁ。


翌日美術館に行く道すがら、学生達が道ばたに置いていった大量の家財道具を見ましたがほとんどはボロボロで、ゴミの山にしか見えませんでした。
あの時左に曲がった自分を褒めてあげたいです!

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# by mag-ikeda | 2013-10-08 19:51 | Comments(0)

第15便「上からの眺め」

僕の作品は細かいのでついつい細部にばかり眼がいきがちですが、実は同じくらいかそれ以上に遠目の印象を大事にしているのです。
近くと遠く。
このどちらもが成り立ってこそなので、作品が進めば進むほど離れて見る時間が多くなります。


美術館スタッフのアイデアで今回は脚立を使って上から眺めることになりました。
これでどうやって離れて見るかという問題は一応は解決です。
本当はこれまで通り壁に立てかけられればベストですが、一人で30キロを抱えるのはリスクが大きすぎます。


これもこのサイズと場所ならではの経験。
ここからでないと見れない景色が絵の中にあるかもしれません。

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# by mag-ikeda | 2013-10-05 12:38 | Comments(0)

第14便「壁塗り」

せっかくのアメリカ生活。
どうせなら日本ではできないことに挑戦しようと、部屋の壁を好きな色に塗ることにしました。
こちらでは自分の家はもちろん、アパートの壁にもペンキを塗るのが一般的なようで、ホームセンターに行くとペンキコーナーにはずらりとサンプル。
みんなそれぞれ好きな色を選び、カウンターで調合してもらいます。
色だけではなくどこの部屋を塗るかによって光沢や耐水性も選べるのでこだわろうと思えばかなり追求できます。


とりあえずは寝室を塗ってみることにしました。


マスキングテープで塗りたくない部分をカバーするのに1時間。
はけとローラーを使って塗るのに30分。
乾くのに1時間。


あっという間に完成です。

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# by mag-ikeda | 2013-10-03 21:33 | Comments(0)

第13便「リトグラフ」

今回はリトグラフに挑戦です。
同じものを見比べたいのでモチーフは同じくハトの顔。


リトグラフは石版画とも呼ばれ、すべすべの石版の上に油脂性の画材を使って描いていく技法です。
銅版画に比べ明るい黄色みがかったグレーの画面に濃い色のインクや鉛筆で描くので明暗の反転がなく、作業自体はいつものペン画の要領とさほど変わりません。


その油脂性の画材ですが、スタッフの方が僕が日頃使っているペンに近い細さのものをいくつか用意してくれました。
しかし残難ながらこれが異常に使いづらいのです。
僕が慣れてないからか油脂性というインクの性質からか、とにかく頻繁に目詰りします。
線自体もすーっと引けるというよりも、ペン型の修正液のように若干ペン先を押し付けないとインクが出てこないので線描というより点描のような雰囲気。
とにかくなかなか上手くいきません。
ペン先が太いものは問題なく描けるものの、それでは太すぎて羽毛の一枚一枚を表現できないので不自由ながらも使うしかなく。


リトグラフ用の鉛筆と併用してようやく出来上がりました。
いよいよ摺りに入りますが、職人さんが「このグレーの下地に惑わされる人が案外いるんだよ。これでオッケーか?」と訊ねます。
内心「俺はそんなミスはしない」と思いながらも笑顔でオッケーと答える僕。
「よしわかった」と職人さん。
固そうなインクの塊をへらで何度も延ばし、それを小さなローラーいちめんになじませます。
それを原画につけたり、洗い流したり、拭いたりといくつかの面白い行程を繰り返し、いざ印刷という所で今日は時間切れ。
残りは来週です。


日本の感覚だと「もうちょっとだからやりましょうか」となりそうなところですがそこは北米。
途中だろうが何だろうが5時には終わり。
みんな帰りの時間には実にシビアです。
もうちょっと頑張るというのが日本人の美徳ですがここでは人によっては嫌な顔すらされることも。
仕方がありません、引き下がります。


そして翌週の月曜日、摺り上がったものを見て愕然!
全然色が出ていない。
色といってもモノクロですがとにかくスカスカで立体感や空間感、色味の幅などが全く表現されていない。
あんなにしっかり描いたのに。


スタッフみんなの「どうだ?」の質問に言いたいことは山ほどあれどそれを伝える言語力がなく、それでもなんとか「原画と全然違う」「もっと濃く摺ってくれ」
と伝えますが皆意味が分からないのかキョトンとしています。
「これでオッケーと言っただろ?」
「色を変えたいのか?」
いや違う。もっと描き込んでるんだからそれを忠実に表現してくれい


らちがあかないのでもう一度加筆することにしました。
職人さんも意味が分からぬといった表情でとりあえずもう一度描ける状態に戻してくれます。
渡された石版は一度インクが落とされ、グレーの面にうっすらとハトの顔が描いてあります。
それを見ていて「あっ」




グレーの面に惑わされてた…….


白い紙に黒のインクで描いた場合、線の密度が薄いと線同士の隙間から白がチラチラと目立つので、そこにもう少し加筆をしたりして描き込みの密度を調節できるのですが、
この石版の場合、グレーの下地とインクの色味が近いのでよほど意識して描き込まないと、一見しっかり描いているように錯覚してしまい、白い紙に写した時に正体がバレてしまうのです。
経験豊かな職人さんはそのことも見越してあの時声をかけてくれたんだ……。


「だから言ったろ」とポンと肩を叩かれ、グウの音もでないままとにかく次はしっかりと描いてからの2回目。
今度は割合上手くいったようです。
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# by mag-ikeda | 2013-10-01 20:53 | Comments(0)

第12便「銅版画」

毎週月曜は美術館が休みなので版画工房に通っています。
もともと同時進行で2つの作品を作れない性分の僕ですが、強制的に休むしかない環境の元ではそのスタイルも変えざるをえません。
これもいい機会と捉えて、ペン画と版画の制作に挑みます。


今日はとりあえず銅板に描いてみた線描を実際に摺ってみます。


銅版画は防食剤でコーティングされた銅の板に針で引っ掻くように絵を描き、それを酸にある時間浸して腐食させることで、描いた部分だけが侵食されそれにインクを刷り込むことで紙に転写する技法です。
僕のいつもの作風がペンを使った細密な絵なのでこれがイメージし易かろうということでやってみたのですが、
白い紙に黒いインクで描くことに慣れてる僕にとっては黒い画面から明るい線を削りだすというこのやり方はずいぶん戸惑います。
黒い部分が白く、明るい部分が黒く印刷されるわけですから。
もちろん左右も反転しているし、気軽に今どんな感じかをチェックすることもできない。
完成予想図がほとんどイメージできないままに下絵は終了、いよいよ摺りの行程です。


ここからは完全に職人さん任せ。
酸に浸している間はすることがありません。
やがて浸し終わった版の上から職人さんがインクを乗せ、擦り、そしてローラーの上に。
濡らした紙をその上に置きハンドルを回し、ローラーが版を通過するとそこには真っ平らに押しつぶされた紙が。
慎重に紙をはがすとそこにはくっきりと印刷された鳩の顔。


初めての版画を目の前にして最初に出た僕の感想は「へぇ~」というなんとも他人事のようなもの。
経験のない僕にはこれがいいのか悪いのかという判断基準がまだないので、ただただ事実を受け入れるしかありません。
こればかりはとにかくたくさん経験するしかないのでしょう。
ただやはり細かいという共通項はあるものの、出来上がりの雰囲気はペンと版画ではずいぶん違います。
これをペン画に近づけてゆくべきか、それとも版画ならではの特徴を前面に出すべきかが思案のしどころといったところでしょうか。

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# by mag-ikeda | 2013-09-27 19:29 | Comments(0)