池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

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池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

バンクーバー日記


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第56便 「中島千波先生」

昨年末に嬉しい連絡を受けました。
百貨店の高島屋が主催する「タカシマヤ美術賞」を受賞したのです!
この賞は1990年に50歳未満の美術作家および美術文化に貢献した団体の助成を目的として設立された賞で、他薦によって申請されたのち、作品や活動歴などの審査を経て受賞者が決まるというものです。
今回は大学時代の恩師である中島千波先生が僕に内緒で推薦してくださっていたらしく、思ってもみなかったこのニュースは母国を離れて生活する身にとって久しぶりの日本との繋がりである事と同時に、遠く離れた故郷からの励ましにも似た心強さを感じさせてくれるものでした。
それは卒業してもなお自分の事を気にかけてくださる先生のお心遣いが、故郷の両親の親心と重なって思えたからに他なりません。


助成金200万円は制作中の3年間ほぼ無収入の僕にとって大きな支えになります。
そしてさらに嬉しい事に、授賞式に出席するために日本に帰れるというではありませんか!
久しぶりの日本のお正月を、しかも授賞式で帰れるなんて….嬉しさが沸々と湧いてきます。
本来なら僕だけ帰るところを、ちょうどビザの更新と重なっていたので家族全員で行く事になりました。



謹賀新年とビザの更新も滞りなく終わり、迎えた授賞式の1月19日。
場所は帝国ホテルです。
今回の受賞者は僕を含めて3人の作家さんと2つの団体。
現代美術家の小沢剛さんと漆芸家の笹井史恵さん、長崎ミュージアム振興財団と川崎市岡本太郎美術館。

思い返せば芸大の学生だった頃、高島屋でディスプレイのアルバイトをしていました。
閉店後の店内の案内板やショーウインドウの飾り替えのみならず、子供向けイベントのある時にはドラえもんやシルバニアファミリーの着ぐるみの中に入って風船を配ったものでした。
それがいまやその高島屋から賞をいただけるなんて、画業+貢献度を評価されたみたいで嬉しさも倍増です。



会場にはたくさんの方々。懐かしい顔も大勢あります。
スピーチで上がった壇上から皆さんの顔を眺めてるうちに、普段は思いもしないことですが、僕がマディソンでこうして作品制作をしながら外国の生活を謳歌できるのも、こうしたいろいろな方達からの応援
なくては出来ない事なんだと改めて気付かされました。

そして中島先生との数年ぶりの再会。
いつお会いしてもにこやかで屈託のない笑顔にこちらの気持ちもホッとするというか…ほぐされていくというか、
失礼を承知で言うならば、大好きな親戚のおじちゃんに会った時の安堵感に似ています。
大作家であるにも関わらずこちらが何でも話せてしまう気さくでおおらかな人柄と、作品に対する情熱と厳しくも真摯な眼差しで、先生は会うたびに作家としての大切な言葉をくださいます。

その先生から今回いただいた
「どんなに小さな作品でも決して手を抜いてはいけない。」
というお言葉。


またひとつ僕の中での肝に命じておくべき大事な心得になりました。

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# by mag-ikeda | 2015-07-10 18:20

第55便「日本代表!」

制作中同じ姿勢で長時間座りっぱなしの僕にはスポーツが欠かせません!
体を動かす事の方が絵を描くよりも好きな僕は、仕事以外の時間はほとんどスキーやクライミング、アウトドアの事ばかり考えています。

しかしこのフラットなウィスコンシン、山はあっても丘みたいなもんで、スキーもクライミングもバンクーバーとはスケールが比べ物になりません。
それでも無いよりはましと時間があれば足しげく通ってはいますが….。


マディソンに来てから新しく始めたのがインドアサッカー。
週に一度のお楽しみ。
我がチームはマディソンに住む日本人コミュニティーで結成された、いわば日本代表!
相手は週代わりですが、基本アメリカ人を中心にロシア、南米などデカい奴らがウヨウヨです。


全員がサッカー経験者ではないのでなかば食後のちょっとした運動にみんなで汗を流そう…とピースフルな雰囲気が漂うかと思いきや
どっこい試合が始まればそこはスタジアム、国と国との威信をかけたガチンコのぶつかり合いです!
ルールはアメリカ式?にちょっと変わってて、フットサルくらいのサイズのコート。
アイスホッケーのように周りが壁に囲まれているのでスローインはなく、壁を使ってパスも出来ます。
また人数は6人で、いつでも何人でも交代していい仕組み。
前後半25分ずつの50分。
スローインがないため休みなく走り続け、交代しないととてもじゃないがもちません。



それにしても外国人選手のがたいのデカさよ!
写真のチームは小柄なほうでしたが、それでもパワーの違いをまざまざと見せつけられます。
まともにディフェンスしようもんならはじき飛ばされて壁に激突。
歩幅も大きいのでスピートでも敵いません。
ブラジルやメキシコ系の選手なんか、それだけで数割増に上手く見えるし(実際上手いですが)そいつらがずらりと並ぶともうそれだけで萎縮もするってもんです。



いろいろな点で不利な我ら日本代表。
だからこそ相手を倒した時の爽快感はたまらないんだよな〜!!




いや〜それにしても。
少し前までテレビでのサッカー日本代表のふがいなさを度々はがゆく思っていたものですが、その大変さが今は身をもって分かります。
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# by mag-ikeda | 2015-06-09 21:15

第54便「タイムラプス撮影」

きっかけは偶然の出会いでした。

もともとここで作品を作るにあたり、記録用に進行状況を定期的に撮影したいという主旨の話は美術館に伝えていたのですが、いくつかのハードルがあって未だ実現には至っていませんでした。
撮影や機材に詳しくない僕には何を揃えてよいのか、またどのような方法で撮影をしていくのか、時間やコストは?等々さまざまな疑問があり、ぼんやりとイメージはできてもどこから手をつけていいか分かりません。
美術館側からは、天井からビデオカメラを取り付けて撮影する案がでたものの、その後の調べでいくつかの諸問題があって、その方法は難しいという事に。
そう言われるとどうしようもなく、かといって具体的な他の方法を模索する事にばかり時間を割くわけにもいきません。
機会があるごとに館長さんにどうにかならないか尋ねてみるもののそこはアメリカ、自分主導で強引にでも動かない限り何もやってくれません。

結局考えあぐねながらも制作はそのまま進み、気がつけば撮影せぬまま1年半が経過しようとしていたのでした。


その日はいつものように午後からのスタジオ一般公開で、数人の見学者が入れ替わり訪れていました。
その中の一人の男性が僕に話しかけてきました。
「制作状況を記録に撮らないのか?」

「以前から撮りたいとずっと思ってるんだけどいろいろと難しくて。美術館にも相談してるんだけど設営が大変らしくて無理だと言われたよ」

「そんなことないよ!タイムラプス撮影でやれば簡単にできるよ!絶対やるべきだ。」


彼の名はロブといい、自分もアーティストであることを僕に伝えると、自分の作品が出来上がるまでを撮影したビデオを携帯で見せてくれ、タイムラプス撮影がいかに簡単、かつプロセスを見せるのに効果的かをクドいくらいに熱弁します。
そして頼んでもいないのにてきぱきとスタジオ内の設備を点検し、美術館スタッフを読んで話し、なんとその日のうちに館長さんに直談判する手配まで取り付けてしまったのです!
なんたる行動力、いやそれよりもなぜ会ったばかりの赤の他人にここまで……
これまで遅々として進まなかったことが一人の登場によってここまで進展するかという驚き、またあまりにも出来過ぎた展開への一抹の不安….
ロブの言う、「こんなに時間のかかる作品のプロセスは絶対に面白いからみんなに見せるべきだよ」という言葉をそのまま鵜呑みにしていいんだろうかという疑念にかられながらもあれよあれよと計画は進み、
数々の難問をクリアし、撮影にかかる機材やコストを計算し、それを美術館側に書類として提出するところまでをこなし、数週間後には館長さんからの了解を取り付けたのでした。



ちなみにタイムラプス撮影とは、カメラをある場所に設置しっぱなしにして、数十秒に一回シャッターを切り、それらの写真を数百、数千枚とつなげてまるで動いているかのように見せる撮影方法の事で、夜空の星の動きをテレビなどで見た方も多いと思います。
僕の作品は時間が年単位でかかるので、この方法で撮影し、展覧会などで鑑賞者にそのプロセスを見せるのはどうかという提案がかねてから持ち上がっていたのでした。



設営当日、ロブの強力な助っ人としてマディソンのカメラカンパニーで働く男性クライトンを紹介してくれました。
ロブは普段カリフォルニアを拠点に制作しているので、目下のところこのクライトンが今後撮影から備品の準備に映像の編集まで一気に引き受け、ロブを司令塔に最後まで関わっていきます。
僕の心配していた、何か金銭的な思惑のようなものも一切ないようで、設備はクライトンの会社のものを使ったり、必要経費は寄付金を募るなどしてやるとの事。
とにかくこの作品のプロセスを映像におさめる事が自分達にとってワクワクする経験だと。
僕にはちょっと想像し難いその情熱の源ですが、これもいいと思ったものには労力を惜しまないアメリカ人独特の考え方のような気も、しないでもありません。
躊躇して断ったところでまた振り出しに戻るだけ、何も動きません。
これもきっと縁。チャンスに乗っかってみる事に決めました。



そうして作品制作の初の試みのひとつ、タイムラプス撮影はようやく動き出しました!

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# by mag-ikeda | 2015-05-15 18:39

第53便「Gateとグラウンドゼロ」

展覧会の合間にニューヨークを観光。
再びグラウンドゼロの跡地に行ってみると3年前にはなかったモニュメントが。


そしてそこで僕の目に飛び込んできた光景に驚愕!!
まさに僕が2010年に描いた小作品「Gate」そのものじゃないですか!!


水面に大きく開いた四角い穴。
その底にはもう一つの世界があり、旅客機が飛んでいる。
直接9.11のテロを題材にしたわけではないけれど、その構成、そのコンセプト、
ただの偶然と片付けてしまうにはあまりにもそっくりで、その意味を考えながらしばし呆然としてしまいました。

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# by mag-ikeda | 2015-04-11 17:25

第52便「Garden of Unearthly Delights 展 後編」

三度目のニューヨークにやってきました。
今回の目的は4年前と同じジャパンソサエティギャラリーでのグループ展への参加、それに伴うオープニング関連のイベントに出席するためです。
参加アーティストは僕、天明屋尚さん、チームラボの3組。
僕の展示は昨年の冬のチェイゼン美術館で見せた作品群に加え、2008年の個展以来、久しぶりに公の場でのお披露目となる現時点で一番大きな作品の「予兆」。


ギャラリーに着くなりいくつかのインタビューや写真撮影。それらを終え、これからの数日間は報道向けのプレス内覧会、VIP内覧会にメンバーオープニング、一般オープニングにアーティストトーク….と続きます。
会場の設営や取材の対応に追われ、華やいだ中にも慌ただしく動き回るギャラリースタッフの人達。
各アーティストの部屋ごとにそれぞれ違った雰囲気で展示され、今は静かにその時を待っている作品群。
まだ陽が高く明るい会場にも、ピンとした緊張感が漂っています。
4年前のグループ展と違って、自分ではずいぶんリラックスしていたものの、やはり会場に人が集まり始めるとどこか落ち着かなくなってつい会場を何周もしてしまいました。


午後から始まったプレス内覧会。
そこで嬉しい偶然がありました。
朝日新聞のニューヨーク支社の方がなんと、霞ヶ関で法廷画を描いていた頃に大変お世話になった記者さんではないですか!
2年前からニューヨーク勤務になり、偶然展覧会案内の中に’’池田学’’という名前を見つけて、ひょっとしたらと思って来てみたとのこと。
思い起こせば裁判所の記者室で次々に入ってくる裁判の様子を分刻みの慌ただしさで記事にまとめ、デスクに送り、修正して、、と戦場さながらに走り回っていた記者さん。
かたや僕も原画の入校が遅れればその日の新聞の記事内容が飛んでしまうため、絵の仕上げに必死でした。
世間話すらする時間が無かったあの頃から数年後、今度はニューヨークで、しかも裁判画ではなく自分の本職の絵をようやく見てもらえたということが本当に嬉しく、あの日々が今日に繋がっていたと証明された瞬間に立ち会えて、胸が熱くなりました。


そして夕方から始まったVIPオープニング。
あたりが暗くなってくるにつれギャラリーは次第に活気づき、気がつけばたくさんの人、人、人!
一階のロビーは人いきれでちょっと蒸し暑いほどです。
この日のために日本からはギャラリーオーナーの三潴さん、チェイゼン美術館の館長さんもマディソンから来てくださいました。
メトロポリタン美術館の日本館キュレーター、ジョンさんや例の大物コレクタージョン・フェランさんも来てくれました。
さすがニューヨーク、日本人の方々もたくさん。中にはテレビや雑誌などでお見かけした人も。
それ以外にも友人、知人も含めてたくさんの人が駆けつけてくれ、作品説明をしたり再会を喜んだりと水を飲む暇もないほどでしたが、僕にとってはこの時間、ロビーで飲めないお酒片手にウロウロしてるよりよっぽど楽しいのです。


部屋の中でコツコツ描いている数年間はほとんど人と交わる事もなく、いわば自分の世界という土の中を黙々と掘り進んでいる蝉の幼虫みたいなもんです。
家族以外の人と話す事も少ないので声帯の筋肉も衰え、長年同じ姿勢をとり過ぎた結果、背中も丸くなってしまいました。
僕にとって絵を描く事は、「自分の思い描いたイメージを形にしたいから」という本能的欲求であるのはもちろんですが、それと同等に「作品を通して人と関わりたい」というのがあります。
どうやったら人が面白いと思えるようなアイデアや構図を盛り込めるか。
頭の中のほとんどはこれで占められています。
常に第三者の視点を意識しながら制作するというこの姿勢は、学生時代にデザイン科で擦り込まれてきたデザインの考え方に由来しているのかもしれません。

まさに土から出て日射しをいっぱいに浴びているこの限られた時間は、人々の表情や様子を垣間見たり直接感想を聞いたり、絵を通してコミュニケーションができる数少ないチャンスなのです。
そしてそこで得たたくさんの言葉や刺激が、次の数年分の栄養となるのです。


わずか一週間と短い滞在ですが、とにかく楽しみです!!

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# by mag-ikeda | 2015-03-23 17:51