池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

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池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

バンクーバー日記


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第72便「密着取材その1」
at 2019-02-22 17:29
第71便「’2016 10月」
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第70便「NHK」
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第68便 「’2016 初夏」
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「再開」
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第72便「密着取材その1」

NHKの密着取材が始まりました。
まず10月に数日間撮影をし、11月にもう一度来て完成までカメラが追いかけます。
最初はカメラに横で撮り続けられるという違和感に若干緊張していた僕ですが、カメラマンさんやコーディネーターさんの気遣いや声かけのなんと絶妙なこと!
僕が作品だけに集中できるように、まるで空気のように気配を消していたかと思えば、僕がペンを休めるタイミングを見てスッと質問が入ってきます。
カメラを向けられているというストレスがほとんどありません。
密着するということは撮られる相手をいかにリラックスさせ、自然な状態に持っていくかがおそらくとても大事で、こうした雰囲気づくりは撮影のスキル以上に求められる技術なのかもしれません。
プロフェッショナルな仕事に感心してしまいました。

写真は左上部の枝の部分を鉛筆で下書きしているところ。
もうここまできたら構図もほとんど出来上がっていて、何をどう描こうが大きく絵が崩れることはありません。しかもここは画面の最上部でほとんど間近で見ることができない部分。
ほとんど注目されるような場所ではありません。
でも一方で、この画面の外側に何が続いているかを連想させる重要な部分でもあります。
いわば画面の端をどう処理するかで、その絵に広がりが出たりあるいは窮屈な印象になったりもするのです。
こういう場面では下書きはとても大事。
アドリブだけではリスクが大きすぎます。

この写真では残りあとわずかに見えますが、ここまで来るのに3年2ヶ月を要していて、この白い面積をあと1ヶ月足らずで埋められるかどうかは本当に微妙なところ。
緊張と焦りで喉がカラカラ。

ちなみにこの日は偶然ウィスコンシンの地元のテレビ局も撮影に来ていて、日米のカメラマンさん同士の共演になりました。
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# by mag-ikeda | 2019-02-22 17:29

第71便「’2016 10月」

10月に入り、街路樹の紅葉もそろそろ始まる頃、作品の完成日を11月17日に決めました。
この日に仕上げるようにと誰かに決められたわけではありませんが、ここまでの進み具合から予測してあと1ヶ月あれば完成できます。
またこの日は三女の一歳の誕生日で、出産にもこの作品の制作で立ち会ってあげれなかったという思いから、せめて一歳の誕生日は全てが終わった晴れやかな気持ちで祝ってあげたかったのです。

そんな父親の宣言を聞いて、長女がサプライズで完成までの日めくりカレンダーを作ってくれました。
嬉しい〜!!
でもこれで絶対に締め切りまでに終わらせなければならなくなった….(汗)
これからは毎日スタジオに着いたらカレンダーをめくって、家族みんなの声援を背に、お父さんガンバルぞ〜!

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# by mag-ikeda | 2019-02-22 17:26

第70便「NHK」

NHKの番組ディレクターの方から連絡があったのは佐賀の皆さんが帰られた後、7月の終わりのことでした。
来年の佐賀県立美術館での個展の話を聞いたディレクターさんが興味を持ってくださり、この作品ができるまでの様子を密着で撮影して、それを50分間のドキュメンタリー番組にしたいという打診だったのです。
佐賀のテレビや新聞で作品が取り上げられて県内で紹介してもらえるということは、多くの人にこの絵を知ってもらうまたとない機会。それが全国放送のNHKとなればなおさらで、作家としてこんなに嬉しいことはありません。

そして何回かメールでのやり取りをしているうちに、ある偶然によってこの話が持ち上がったということが分かりました。
番組の放送予定は年末。ディレクターさんが僕の個展の話を知ったのは夏ごろだったようですが、その時点ではケガのことは知らず、放送日から逆算してマディソンで取材をする11月頃には僕の作品は完成してしまっているのでタイミングが遅すぎたと諦めていたようです。
ところがブログでケガをして完成が3ヶ月近く延びるということを知り、それなら撮影することができるとなった。
ケガを肯定するつもりは毛頭ありませんが、このケガをしたからこそ、この幸運に恵まれたとも言えます。

大ピンチの後に巡ってきた大チャンス。
この幸運を生かすためにも迷惑をかけた人達の恩に酬いるためにも、完成予定日までに何がなんでも終わらせる。
その事だけを考えていたように思います。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:33

第69便 「’2016 夏」

佐賀からテレビ局、新聞社、県立美術館の学芸員の一行がマディソンに来られました。
ギャラリーのスタッフ以外でここマディソンに日本から人が訪ねてくる事はほぼない上に、同郷の人達となると家族が来たような親近感すら覚えます。
スタジオでの制作の様子を撮影したり、普段よく行く湖や版画工房、そして怪我でお世話になったカレンの家などを回り、ここでの生活が作品とどう結びついているのかを取材していきます。
作り手にしてみれば、制作は日常生活そのもの。
妻や娘たちとの生活、ここで目にしたものや聞いた事、いろんな体験がモチーフとなり絵の一部になっていきます。
その日常を丁寧に剥がしながら、作品の深部に少しずつ迫っていく様はまるで化石の採取のよう。
しかしこうして掘り起こされると、胸の中にしまっていてやがて忘れてしまった制作の原点のようなものがたくさん見つかり、自分自身の心の軌跡に驚かされたりもします。

僕のここでの生活がテレビや新聞を通して佐賀の人達の目に触れる。
美術館の人達を含めたくさんの関係者の方々がこの作品の完成を待っている。
改めて作品がもはや自分だけのものではないということ、たくさんの人を巻き込んで動いているということを認識せずにはいられません。
なんだか本当に久しぶりに、自分の「仕事」というものを強く意識させられた数日間でした。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:28

第68便 「’2016 初夏」

三女の出産のために日本に帰国していた家族が約1年ぶりにマディソン帰ってきました。
それにしても子供の1年間の、なんと変化の大きいこと!
その間僕が進めていた絵なんか見た目はほぼ変わらないというのに、同じ時間でこうも変化するのかと驚かされます。
特にまだほとんど赤ちゃんだった次女がすっかりおしゃべりが上手になってるのを目の当たりにすると、我が子ながら知らない子みたいで戸惑うばかり。
三女においては会ったのが生後数日、そして今はもう6ヶ月。ほぼ初対面みたいなもんです。

走り回る足音、泣き声、笑い声、物を壊したり散らかしたり….今まで静かだった一人の生活がまるで夢だったかのように、あっという間にいつもの日常が押し入ってきてふんぞり返ってる。
そんな感じ。
ゆっくりと感傷に浸る暇もありません。



同じ頃、嬉しいニュースが飛び込んできました。
翌年1月からの佐賀県立美術館での個展に向けて、そのPRの一環としてここでの制作の様子を撮影したいというお話が佐賀県のテレビ、新聞社からありました。
この夏に県立美術館の方々も一緒にマディソンに取材に来るとのこと。
取材してもらうのももちろん光栄ですが、日本からわざわざこんなとこまで、しかも佐賀県民が来てくれるとあっては、いやが応にもテンションが上がります!

とにかく家族も帰ってきたし、右手も動くようになってきたし、あとは作品の完成だけ。
来るべきその日に向かって、家族全員で協力しながら一歩一歩進むだけです。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:09