池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

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池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

バンクーバー日記


ミヅマアートギャラリー

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第70便「NHK」
at 2019-01-09 20:33
第69便 「’2016 夏」
at 2019-01-09 20:28
第68便 「’2016 初夏」
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「再開」
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第67便「三潴さんチェック」
at 2016-11-01 15:30
第66便 「4月」
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第65便 「視点の違い」
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第62便「ケガ」
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第61便「Karen」
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第60便「新しい命」
at 2016-06-04 12:48
第59便「生きるということ」
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58便 「細部と全体」
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第57便 「2年」
at 2015-08-25 21:56

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第70便「NHK」

NHKの番組ディレクターの方から連絡があったのは佐賀の皆さんが帰られた後、7月の終わりのことでした。
来年の佐賀県立美術館での個展の話を聞いたディレクターさんが興味を持ってくださり、この作品ができるまでの様子を密着で撮影して、それを50分間のドキュメンタリー番組にしたいという打診だったのです。
佐賀のテレビや新聞で作品が取り上げられて県内で紹介してもらえるということは、多くの人にこの絵を知ってもらうまたとない機会。それが全国放送のNHKとなればなおさらで、作家としてこんなに嬉しいことはありません。

そして何回かメールでのやり取りをしているうちに、ある偶然によってこの話が持ち上がったということが分かりました。
番組の放送予定は年末。ディレクターさんが僕の個展の話を知ったのは夏ごろだったようですが、その時点ではケガのことは知らず、放送日から逆算してマディソンで取材をする11月頃には僕の作品は完成してしまっているのでタイミングが遅すぎたと諦めていたようです。
ところがブログでケガをして完成が3ヶ月近く延びるということを知り、それなら撮影することができるとなった。
ケガを肯定するつもりは毛頭ありませんが、このケガをしたからこそ、この幸運に恵まれたとも言えます。

大ピンチの後に巡ってきた大チャンス。
この幸運を生かすためにも迷惑をかけた人達の恩に酬いるためにも、完成予定日までに何がなんでも終わらせる。
その事だけを考えていたように思います。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:33

第69便 「’2016 夏」

佐賀からテレビ局、新聞社、県立美術館の学芸員の一行がマディソンに来られました。
ギャラリーのスタッフ以外でここマディソンに日本から人が訪ねてくる事はほぼない上に、同郷の人達となると家族が来たような親近感すら覚えます。
スタジオでの制作の様子を撮影したり、普段よく行く湖や版画工房、そして怪我でお世話になったカレンの家などを回り、ここでの生活が作品とどう結びついているのかを取材していきます。
作り手にしてみれば、制作は日常生活そのもの。
妻や娘たちとの生活、ここで目にしたものや聞いた事、いろんな体験がモチーフとなり絵の一部になっていきます。
その日常を丁寧に剥がしながら、作品の深部に少しずつ迫っていく様はまるで化石の採取のよう。
しかしこうして掘り起こされると、胸の中にしまっていてやがて忘れてしまった制作の原点のようなものがたくさん見つかり、自分自身の心の軌跡に驚かされたりもします。

僕のここでの生活がテレビや新聞を通して佐賀の人達の目に触れる。
美術館の人達を含めたくさんの関係者の方々がこの作品の完成を待っている。
改めて作品がもはや自分だけのものではないということ、たくさんの人を巻き込んで動いているということを認識せずにはいられません。
なんだか本当に久しぶりに、自分の「仕事」というものを強く意識させられた数日間でした。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:28

第68便 「’2016 初夏」

三女の出産のために日本に帰国していた家族が約1年ぶりにマディソン帰ってきました。
それにしても子供の1年間の、なんと変化の大きいこと!
その間僕が進めていた絵なんか見た目はほぼ変わらないというのに、同じ時間でこうも変化するのかと驚かされます。
特にまだほとんど赤ちゃんだった次女がすっかりおしゃべりが上手になってるのを目の当たりにすると、我が子ながら知らない子みたいで戸惑うばかり。
三女においては会ったのが生後数日、そして今はもう6ヶ月。ほぼ初対面みたいなもんです。

走り回る足音、泣き声、笑い声、物を壊したり散らかしたり….今まで静かだった一人の生活がまるで夢だったかのように、あっという間にいつもの日常が押し入ってきてふんぞり返ってる。
そんな感じ。
ゆっくりと感傷に浸る暇もありません。



同じ頃、嬉しいニュースが飛び込んできました。
翌年1月からの佐賀県立美術館での個展に向けて、そのPRの一環としてここでの制作の様子を撮影したいというお話が佐賀県のテレビ、新聞社からありました。
この夏に県立美術館の方々も一緒にマディソンに取材に来るとのこと。
取材してもらうのももちろん光栄ですが、日本からわざわざこんなとこまで、しかも佐賀県民が来てくれるとあっては、いやが応にもテンションが上がります!

とにかく家族も帰ってきたし、右手も動くようになってきたし、あとは作品の完成だけ。
来るべきその日に向かって、家族全員で協力しながら一歩一歩進むだけです。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:09

「再開」

前回の日記から約2年半、かなり間が開きましたがまた徐々に更新していこうと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、チェイゼン美術館で制作していた作品「誕生」が2016年の11月に完成しました。
前回の日記が2016年4月、完成の約7ヶ月前くらいのものですが、それを最後に作品の追い込みで日記を書く余裕がなくなり更新がストップしました。
あの頃の気持ちではもう書けないのですが、しばらくの間これまでの出来事を簡単に遡ってみたいと思います。

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# by mag-ikeda | 2019-01-09 20:08

第67便「三潴さんチェック」

マディソンに、急遽ギャラリーのオーナー三潴(みづま)さんが怪我の様子を見に来ることになりました。

怪我をして、妻の次に電話をしたのが三潴さん。
今年の年末からのミヅマアートギャラリーでの個展を皮切りに、その後いくつかの美術館での大規模な回顧展を来年に控え、日本では、三潴さんと各美術館やメディア、県との間ですでに具体的に話が進んでいます。
電話をかけたのは受傷の数日後。
右手も全く動かずこの先の見通しも立たず、とにかくこのままでは締め切りの9月に作品が間に合いそうにないので会期を延期してほしいという内容の話をしたのは覚えています。
三潴さんから、プロとしての自覚のなさやいろいろな関係者にかかる大変な迷惑、今後どうするのか等について非常に厳しく言われました。
僕の展覧会とはいえ個人の都合でもはや日程は簡単に動かせる段階ではなかったのです。
とにかく今は下手に騒がず、状況がはっきりするまでは誰にも話すなという箝口令が敷かれ、日本には一切の情報が行かないようにしたのはこうした関係者の方々への混乱を避けるための処置でした。


それから3ヶ月。


4月とはいえまだ肌寒い曇り空、三潴さん渡米の連絡を受け、僕の心はにわかに不安が立ちこめます。
あれから度々メールや電話で怪我と作品の進捗状況を伝えてはいましたが、その度に厳しく諭され、これは実際に会ったらどんな仕打ちが待ち構えてるかという恐怖と、この怪我のためにわざわざ日本からしなくてもいい長旅をさせてしまったという
申し訳なさ、その他いろんな感情が渦巻いて、まるで近づいてくる台風の前日のような心境です。
Xデーが近づくにつれ、世話焼きで心理学者でもあるカレンは毎晩のように「きっと大丈夫よ」と勇気付けてくれました。


そしていよいよ当日。
天気はまさかの雪。
三潴さんの滞在しているホテルのロビーでどきどきしながら待っていると「おうぃ!池田く〜ん。」といつもの調子でにこやかに握手してくる三潴さん。
手の力具合を確かめて「おう、強いじゃない。これなら安心したよ!コーヒー飲む?」
とソファに僕を促し「いや〜自分で確かめないことには美術館側に説明できないじゃない。で、どうなの、怪我の具合は?」


正直土下座も辞さない覚悟で臨んだだけに呆気にとられるというか、狐につままれるというか、そんな心境。
しかし実際に顔を合わせて話したことでこれまでの電話でのやり取りですっかり固くなっていた感情がすぅ〜っとやわらかくなっていったのは確かです。
何度メールで話したところでやっぱり文字は文字でしかなく、声のトーンや表情などが行間に現れるわけではありません。
目の前で一見何事もなかったかのように振舞ってくださる三潴さんですが、それも作家に対する想いや気遣いがあってのことだと僕にはわかります。
たったこれだけのために十数時間をかけてアメリカまで来てくれたその情熱に、僕は作品で答えるしかありません。


三潴さんが手の回復具合や制作状況を確認できたことで、晴れて箝口令も解けました。
そしていろいろな方々の協力もあって、年末に予定されていたミヅマでの個展は来年夏に延期してもらうことになりました。
回顧展は来年1月に佐賀県立美術館で始まり、4月に金沢21世紀美術館、夏にミヅマ、秋に高島屋と巡回していくことになっています。

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# by mag-ikeda | 2016-11-01 15:30