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池田学 マディソン滞在制作日記


by mag-ikeda

池田学 / IKEDA Manabu

画家。1973年佐賀県多久市生まれ。1998年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。
2000年同大学院修士課程を修了。 2011年から1年間、文化庁の芸術家海外研修制度でカナダのバンクーバーに滞在。
2013年6 月末より、アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにて滞在制作を開始。

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【第95便】「日本・その1」

岐阜県美術館が主催する「円空大賞展」に僕の作品が選ばれ、授賞式のために家族みんなで日本に帰ってきました。

約一年半ぶりの祖国。

暖かい湿った空気、冬枯れの田んぼや山々の淡い色合い、空港や電車内に響く優しいトーンのアナウンス、黒髪の人々、至る所に描かれている可愛いキャラクター達、ジュースの自動販売機などなど、そのどれもが嬉しくて優しく、懐かしい。

以前は外国のようによそよそしく感じた成田空港でさえ、まるで実家のような安心感。

何しろ全てが日本語で済むのですから、これ以上楽な事が他にあるでしょうか。

日頃張り詰めていた糸がほどけ、顔の筋肉も緩みっぱなしの両親をよそに子供達はまるで初めてのものを見るように目をキラキラさせながら、全身で日本の空気を楽しんでいます。


ところで海外に住み始めてもうすぐ10年、毎回帰国するたびに、日本では当たり前だったものが改めて見てみると面白くて不思議な光景として映るようになってきました。

その代表的なものがマスク。

アメリカではマスクをするのは病院だけで、外でしている人を見る事はまずありません。

以前子供の学校に付けて行った時にはみんなからジロジロ見られ、さすがに気まずくなって外したぐらいで、後で友達に聞いたら「こっちではマスクをしてると保菌者だと思われて警戒されるんだよ」と言われてびっくり仰天した事がありました。

それからのぼり旗。レストランやクルマ屋さんの周りに立ってるアレです。

これも海外では見た事がなく、ひょっとすると戦国時代の戦や城の名残で、意外にものすごく日本的なのかなぁ…と思ったりもします。

クリーニング屋さんのディスプレイも面白いものの一つで、店舗の壁やガラスに所狭しと貼ってある値段やサービス内容のステッカーがとてもファンシーである反面、余白があるとついあれこれ描いてしまう僕の性分を見ているようで複雑な気持ちになることも…

でも狭い国土に道路や建物が密集し、さらに文字や絵などの視覚的情報がそこかしこに散りばめられた風土で育ったからこそ、僕のような密集した絵のスタイルが出来上がったのかもしれません。

最後はトイレ。「開けたら閉めよ」のスローガンが学校や家では当たり前だった僕からすると、アメリカの「使ってない時はトイレのドアは開けておく」というのには当初とても混乱させられました。日本では誰かが入っていようがいまいがトイレの扉は閉まっているのでいちいちノックしなければならず、子供達にとってはちょっと大変そう。

いずれにしても新鮮な目で祖国を見るというのは気付きがたくさんあってとても面白いもの。

滞在中に発見したものを持ち帰って、絵の材料にできたらと思います。
(佐賀新聞 2020年2月掲載)

【第95便】「日本・その1」_b0290617_16181840.jpg

次回は7月10日更新予定です。


by mag-ikeda | 2021-07-03 16:22